世界の多くの国々では、地震や暴風雨・集中豪雨などを原因とする自然災害により甚大な被害を受けています。これに対し、日本では地震警報システムの運用は河川の改修、砂防施設の警備など行政による防災対策が着々と進められていますが、私たちの予測をはるかに超える大自然の脅威にさらされることも少なくありません。
パスコはこうした災害から人々の命を守り、経済損失の軽減を図るため、災害発生直後に人工衛星や航空機による被災地の緊急撮影を行い、国や地方自治体等の関係機関に、その情報を提供しています。これらの撮影成果は、被災範囲と規模の把握に用いられ、二次災害の防止や円滑な復旧作業にご活用いただいています。
2018年9月6日(木)3時7分ごろ、北海道胆振地方中北部北緯42.7度、東経142.0度を震源地とする地震が発生しました。震源の深さは約37㎞、地震の規模(マグニチュード)は6.7と推定されています(気象庁発表)。
この地震により、北海道厚真町で震度7、安平町、むかわ町で震度6強、千歳市、日高町、平取町で震度6弱を記録し、強い振れや土砂災害により、住宅や道路などに甚大な被害が発生しました。
被害は死者41名、負傷者749名、住宅の全壊409棟、半壊1,262棟、一部損壊8,463棟にのぼりました(2018年10月29日17時30分:消防庁発表)。
パスコは災害発生直後より被災地の航空写真撮影を実施するとともに、光学衛星「SPOT-6/7」や「Pléiades」を活用し、広域での被災状況の把握に努めました。
2019年10月6日(日)に発生した台風19号は、非常に強い勢力を保ったまま、12日19時前に伊豆半島に上陸、各地で猛威を振るいました。西日本から東日本の太平洋側を中心に激しい雨が降り、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、静岡県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、新潟県、岩手県に大雨特別警報が発令されました。河川では越水や決壊などが発生し、15日朝の時点で床下浸水を含め全国で住宅の1万棟を超える住宅に被害が発生しました。(総務省消防庁10月15日報告より)
台風19号は、事前に大きな被害が予想されていたため、PléiadesおよびSPOT-6/7衛星による関東から東北までの広域の撮影を計画・実施し、情報の収集と被災判読などの解析を行いました。
収集・解析した情報は、国内防災機関、被災自治体、民間企業、メディア等に提供し、被害状況の迅速な把握に貢献しました。
9月11日に撮影したSPOT-6/7衛星画像をもとに、画像解析により土砂移動痕跡等を自動判読しました。土砂移動痕跡等は、厚真町幌内付近を中心に約半径10㎞内に集中しています。
強振動に見舞われた厚真町・安平町を中心に、これまでに類を見ないほど多くの斜面崩壊が発生しました。大半は、地表を覆っていた火山灰層が滑り落ちた表層崩壊で、斜面下にあった家屋を巻き込み、また多くの谷底地を埋積しました。
9月11日に撮影したSPOT-6/日高幌内川上流では大規模な地すべりが発生し、巨大な地塊が河道閉塞を引き起こしました。
浸水域や斜面崩壊の判読データを、政府機関などの各関係機関に提供しました。特に、10月13日にPléiadesが撮影した宮城県丸森町付近の衛星画像は、阿武隈川の氾濫を捉えた数少ない衛星画像として、関係各機関で有効な情報として活用されました。