カンボジア電子海図朝日航洋株式会社
Pléiades衛星画像

VISION-1 © Airbus DS 2019

衛星画像を使用したソリューションの概要

カンボジア王国(以降:カ国)では、シハヌークビル(以降:SHV)港が唯一の外海に面する大水深港であり、国際貿易の重要な拠点として港湾整備を進めています。しかしSHV 港周辺の海図は、1900年台前半に仏国とソ連が作成したものを再編集した紙海図(1/20,000、1997 年に英国水路部が刊行)しかなかったため情報が古いこと及び港湾開発に伴う海図更新を行う機関が無いうえ、電子海図情報表示システム(以降ECDIS) で表示する電子海図も刊行されていないといった問題がありました。そこで、独立行政法人国際協力機構(JICA)による開発計画調査型技術協力案件「カンボジア国電子海図策定支援プロジェクト」において、SHV 港周辺の電子海図を作成する事および、今後海図事業を担うカ国公共事業輸省水路部をカウンターパート(以降:C/P)機関とした電子海図の作成・更新に係る技術移転が2013 年7 月より約4年間にわたり実施されました。 
(出典:公益社団法人日本測量協会発行月間「測量」2017年7月号)

本プロジェクトでは、国内・現地作業における海岸線数値図化/編集作業の能率及び精度向上のため、標定点や地上航海目標等をGNSS搭載デジタルカメラで撮影し、地上写真及びGNSS搭載デジタルカメラによる座標値、見取り図で構成した水路測量標記事を作成しました。海図は縮尺1/20,000で計画していますが、SHV港付近の電子海図の海岸線に関しては、縮尺1/10,000でも対応できる精度で、SHV港沿岸海域については縮尺1/80,000に対応する精度で、Geo‐References修正処理後の衛星画像から海岸線を抽出してデジタル海岸線ファイルを作成しました。衛星画像と現地状況を比較し、変化が認められる海岸線部分は、補完測量を行って現状に一致させた。図2-11に例を示します。

GCP7: KAOH DEK KOUL
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
GCP7: KAOH DEK KOUL
GCP7 :桟橋の北側角に設置
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
GCP7 :桟橋の北側角に設置
GCP11: KAOH KAONG KANG
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
GCP11: KAOH KAONG KANG
GCP11:灯台より10m東に設置
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
GCP11:灯台より10m東に設置

(衛星画像の解像度の良さと岸線抽出精度の関係が判定できます。)
図2-11 補完測量の選点の場所の例

Geo‐References修正処理

衛星画像は、第2章2-6-2に述べた標定点のGNSS測量結果を基に、Ger-Reference修正処理を施しました。その後、縮尺1/10,000相当の電子海図に記載(表示)するための海岸線数値データ及び推定低潮線数値データを抽出しました。

A) Geo-Reference処理によるGCP位置と衛星画像の調整 (日本国内の作業)
CADのRubber sheet functionを利用してGCP点を衛星画像上にあてはめ、衛星画像の歪みを修正しました。このため、GCP点は衛星画像上で見分けやすく、極力、海面に近い岸壁の角付近、灯標付近等で、かつGNSS観測が可能な場所を選定しています。(本作業は海岸線を抽出することを目的としているため、オルソ画像のように高度の修正の必要が無いことから、2次元的な画像の歪み修正に留意しています。)

図2-14 GNSS成果を調整する前の画像
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
図2-14 GNSS成果を調整する前の画像
図2-15 GNSS成果を取り入れて衛星画像を修正した画像
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
図2-15 GNSS成果を取り入れて衛星画像を修正した画像

図2-15では、GCP参照点位置が衛星画像上で正しい位置に来ていることが判ります。

B) 海岸線データ抽出 (海岸線ファイル作成) 
衛星画像の歪み等を修正した後、CAD機能を利用して海岸線形状を計測し、自然海岸、人工海岸及び岩、砂、泥等の属性を付与したレイヤー構造の海岸線基ファイルを作成しました。図2-16は、海岸線を抽出した画面の一例です。当該縮尺の海図描写に十分であることが判ります。

図2-16 縮尺1/10,000程度に縮小した海岸線描画画面例
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
図2-16 縮尺1/10,000程度に縮小した海岸線描画画面例
図2-18 IHO S-57に沿った種別ごとにレイヤー分けした海岸線等
© CNES 2012, 2013, Distribution Airbus DS
図2-18 IHO S-57に沿った種別ごとにレイヤー分けした海岸線等

図2-18は、描画した海岸線をそれぞれ人工海岸(桃)、岩海岸(赤)、砂海岸(黄赤)及び陸部の道路(黄)にレイヤー分類した図である。図中の左欄は、属性が付加された海岸線がレイヤー分類されたファイル構造を示しています。

C) 衛星画像から抽出した海岸線等の現地照合  (カンボジアでの現地作業)
上記で作成した海岸線ファイルを水路測量ソフトウェア“HYPACK SURVEY”にインポートして、デジタル水路測量データ処理システム(DHSDAS)の位置測定機能を利用し、顕著な桟橋角付近等との海岸線位置関係をチェック(照合)しました。
(出典:カンボジア電子海図策定支援プロジェクトファイナルレポート)

衛星画像を使用された理由

縮尺1/20,000の海図に描画する海岸線は、現地調査の代わりになる画像判読ができる高解像度衛星(Pléiades)のアーカイブ画像が整備されていたため、新規撮影することなく利用することができました。現地作業工期の短縮、コストメリットもあり採用しました。

・解像度の良さ (50cm分解能)
・海岸線抽出、航海目標、陸部海図情報の確認等、画像判読に適しています。

効果(採用前の課題と、採用後の効果)

カンボジアのシハヌークビル港周辺では、冷戦時代の海図を再編集した紙海図が使われており、情報の信頼性に欠けていたが、航海用電子海図を作成する基礎的技術をC/Pが身に付けることで航行安全とシハヌークビル港の国際的信用力向上につながる電子海図作成に寄与しました。
本プロジェクトにおいて衛星画像を利用することで、Geo‐References修正処理後の衛星画像から海岸線を抽出してデジタル海岸線ファイルを作成、衛星画像と現地状況を比較し、変化が認められる海岸線部分は、補完測量を行って現状に一致させることができました。

今後の展望

国際海事機構(IMO)は2018年から一定(500t)以上の船舶全てでECDISの搭載を義務化とし、国際水路機関(IHO)が電子海図刊行海域を充実させるため各国協調を図っており、ECDISに対応する国際仕様に則った電子海図が必要となっています。国際港を有しながら電子海図を刊行や更新をしていない国において、衛星画像を本プロジェクト同様に活用することで、速やかに電子海図が整備されることが望まれます。

会社紹介 朝日航洋株式会社

朝日航洋株式会社は、陸海空のあらゆるフィールドで地理空間情報を整備し活用するプロフェッショナル集団です。

自社所有の航空機をはじめ、ドローンや計測車両、ロボットなどを用いて高精度な地理空間情報を取得。

固定資産評価から交通インフラ・公共インフラの整備、電力事業、農林事業、防災などデータの活用は広範にわたり、官公庁や研究機関、民間企業など様々な分野のお客様に地理空間情報ソリューションをご提供しています。